ミラフォン カイゼルバリトン プレミアムについて

 

MIRAPHONE Kaiserbariton Nr. 07 0056L 11000 Premium

 

 ドイツから輸入したミラフォンのカイゼルバリトン、プレミアム。以前からとても興味があったのだが、なかなか購入するチャンスがなかった。勿論、かつて日本に入ってきたことがあるかどうかすら判らない(通常のバリトンのプレミアムは見たことはあったが)、ミラフォン社のバリトンの最高級モデルである。カイゼルバリトンがいかなるモノについてかは、別項(徒然草の「カイゼルバリトンについて」參照)に譲ることとして、ここでは、そのプレミアムモデルが、他のモデルと異なってゐる所に注目したい。

 

・ ブリッジ式マウスパイプ

 通常のバリトンやテューバの場合、マウスパイプの多くの部分がベルに密着してしまふため、相當の抵抗感がある。その爲、ユーフォニアムからの持替へ時は、この(ユーフォニアムと比較して)強すぎる抵抗感のお陰で音の末尾がスッパリ切れ過ぎたり、アタックが強過ぎたりするといったギャップを、豫め理解した上で挑まなければならなかった。その困難が、ブリッジ式マウスパイプを採用することで、大幅に輕減された。

 他社では、フローティングマウスパイプとも呼ばれてゐるこの方式は、マウスパイプをベルにベタ付するのではなく、小さい支柱を挟むことで本體に固定させるものだ。結果、特に音のアタリに影響があるやうで、無理のない力加減でアタックがキマる。吹き心地の良さ、コントロールのし易さは、ブリッジ式マウスパイプの採用で、格段に向上してゐる。拡大したベルやボアとの相性もよく、ユーフォニアムからの持替へが、より一層し易くなった。テノールホルンのような強烈な抵抗感も、味があって好きなのだが、操作性の良いプレミアムの仕樣も、捨てがたい。

 

・ ゴールドブラスの管體

 プレミアムには、イエローブラスとゴールドブラスの機種とがある(末尾が1100がゴールドブラスで、0700がイエローブラス)。今回入手したのはゴールドブラスの方で、補強部分のニッケルシルバーを除いて、管體は全てゴールドブラス仕樣。イエローブラスの華やかな明るさとはちょっと違ってゐて、温もりのある明るい響きが心地よい。ミラフォンの場合、他のモデルにも、ゴールドブラス仕樣のモデルが設けられてゐる。

 

・ ヴァルヴ周りの再レイアウト

 テノールホルンやバリトンなどのレイアウトは、ほぼ決ってゐて、各社ともそれほど大きな違ひはない。せいぜい、3本ヴァルヴの樂器の場合に、第3ヴァルブから伸びる管が上向きか下向きかくらゐの差がある程度である。プレミアムモデルも、基本的なレイアウトの變更はないのだが、ヴァルヴ周りのレイアウトには工夫が凝らされてゐる。

Meister Anton Bariton E30
Miraphone Kaiserbariton 56L Plemium

 左が、通常のバリトンのヴァルヴ、右がプレミアムモデルのヴァルヴである。プレミアムモデルの方が、ヴァルブ周りを大きく取って、ゆったりとした曲りになってゐることがお判りいただけると思ふ。これによって、ヴァルヴ開放時も、ヴァルヴ操作時も、空氣の流れが緩やかになるのである。ゆとりを取った分、レバーの間隔が廣くなったのだが、あまり違和感は感じない。メリットの方が大きかったからだらう。

 また、メータリーの回轉方向が同一といふ點にもご注意いただきたい。普通は Anton のやうに、1.2 と 3.4 の回轉方向が異なる。

 

・ 音程の改善

 この手のロータリー系の楽器は、ミラフォンのクラスになっても、音程が良いとは言へなかった。特に、ユーフォニアムでは高くなりがちな第6倍音のE♭などは、どれも低めになることが多く、第2倍音のB♭などは、とてつもなく低めになる樂器に遭遇することが多かった。カイゼルバリトンプレミアムは、通常のカイゼルバリトンよりもさらに太いボアを備へ(徒然草の「カイゼルバリトンについて」參照)、先に擧げた各部の改良が施された上、なんと音程まで改善されてゐる! 同じミラフォンのカイゼルバリトン560や、560の舊型と吹き比べても、格段に良かった。音程で「おや?」と思ふことが少ないといふことは、演奏中のストレスが相當に輕減されることになる。ワタシの中の「海外の樂器は音程が惡い」「ロータリー式のテノールホルンやバリトンは音程が惡い」「從って、この手の樂器に音程の良さを求めては酷だ」といふレッテルは、見事にうち砕かれた! 「テューバなら、ロータリーは5つ、それにトリガーがないと・・・」と不安でしやうがない方にもお勸めである(笑)。


1. ミラフォンのサイトはここ。
http://www.miraphone.de/
個人輸入は受付けてをらず、日本の代理店として、セントラル楽器、野中貿易、ネロ楽器を紹介された。しかし、かういふところで注文(在庫してゐる筈がないので、一本のみ取寄せでせうなぁ)するとなると、まづ100万圓
は超えてしまふ。しかも、「取り寄せ=買い取り」扱いでせう。そんな價格でこの手の樂器を買ふ人はゐないから、國内の代理店は今後もラインナップには加へないことでせう。

2. 管楽器価格一覧表(ミュージックトレード社刊)によれば、どこの樂器屋さんが仕入れてゐるのか判らないのだが、ベル径295mm、ゴールドブラスのバリトン(カイゼルではない)を販賣してゐるらしい。定價519,750圓也。プレミアムにしては、少し安いやうな氣がするので、通常のモデルのゴールドブラス仕樣かも知れない。この手の樂器の新品を手っ取り早く買ふなら、これでせうね。

3. プレミアムを、通常ルートより安く入手したい方は、當方にご相談下さい。中古、新品とも、ご相談に乘れますが、プレミアムの中古は、まづ出ません。通常のモデル(テノールホルン、バリトン、カイゼルバリトン)も含めて、中古をお探しの方は、こちらをチェック!