【平成15年7月12日】
ワタシが初めて手にしたユーフォニアムは、これと同機種だった。かつてはこれをピカピカにして本番に挑んだものだ。今やアマテュアや學生の間でも、信じられないくらゐ高級な楽器が使はれてゐる時代だが、果たして喜ぶべきか、憂ふべきか・・・。しかし、このボロボロの楽器を手入れして、磨きをかけてステージに上がったことは、かけがへのない、ワタシの經驗である。たまたまこの樂器を入手出來たので、御禮の氣持ちで、ピカピカにしてみせようと思ひ立った。中高生よ、「自分の學校は樂器が古くて・・・」なんて言はさないぞ。よう見とれよ!(笑)
今回のプランは、ズバリ!
「本體銀メッキ+インナーベルゴールド!」(出來れば抜き差し管もゴールド!)
といふ豪華仕樣。本當に出來るんだらうかと、いささかの不安を抱きつつ作業開始!
【平成15年7月吉日】
■ 第一行程 「ラッカーの剥離」
まづは、管體に殘ったラッカーの剥離にかかる。東急ハンズで一本買ってきたが、全く効果無し。どうやら「エポキシラッカーを剥がせるもの」を選ばなくてはならなかったやうだ。後日買ひ直して、管體にスプレーすると、見る見るうちにラッカーが浮いてきた。テナーサックスの割れたリードを使って、ビロビロと浮き上がったラッカーを剥ぎ取る。細かいところまで氣を配らず、まぁ、大ざっぱに第一行程を終了。
■ 第二行程 「サビ取り」
これまた東急ハンズで購入したサビ取り材を使ふ。やはり薬剤の効果はスゴイ。これまた見る見るうちに赤錆が除去され、本體が黄色っぽくなって行く。
【平成15年8月15日】
コンクールやら研修やらの準備で、なかなか手が付けられなかったが、これらの行事が終了し、やうやく一段落付いたので、ボチボチと作業に取りかかった。第三〜第五行程は、部分部分、逐次繰り返し行ふことにした。
■ 第三行程 「液状ヤスリで研磨」
大御所「ピカール」で研磨。ゴシゴシこすると、ピカピカになっていく。
■ 第四行程 「脱脂と洗浄」
メッキがのりやすいやうに、脱脂液(やっぱり東急ハンズで購入)を塗る。ところが、ピカピカだった表面が、曇り出してしまった。まぁ、小さいことは氣にせず、洗浄し、いよいよ銀メッキへ。
■ 第五行程 「メッキと洗浄」
今回はメッキペンによるメッキではなく、「ザ・シルバー・ソリューション」といふ液状の簡易メッキ剤を用ゐた。これは、液體を塗り込むだけで、銀メッキ(っぽく?)仕上がるといふ代物(勿論東急ハンズで購入)。水銀を擦りつける和鏡の仕上げのやうな原理か? 毒性はないとのことだが、ビニール手袋などをしないと、指が眞黒になり、これがまた何日も取れないので、かなり焦る。メッキを施した後、流水で洗ひ流し、銀メッキ艶出し專用の布で磨かうとしたら、どうやら少し剥がれて來た。あまり厚いメッキではなささうだ。メッキペンでやり直すかどうか思案中。
と、まぁ、こんな事を繰り返し、ここまで行きました!
【平成16年1月吉日】
■ さぁ困った
續きをやろうと思ひつつ、どんどん月日は經ってしまった。そのうち簡易銀メッキした部分も變色を始め、銀色ではなくなってきた。「ザ・シルバー・ソリューション」は既に使ひ果たしてをり、繼續にはさらに費用がかさむことが判明。すっかりやる氣は失せてゐた。
年も明けてしまったある日、方向轉換を思ひついた。さうだ、どうせなら短期間でハデに仕上げてしまはう! そこで、こんな風にしてしまった。「本體ブルーラッカー&インナーベルイエロー」
着色には、油性ラッカースプレーを使用。養生テープでマスキングをしたので、抜き差し管、ピストンともに動きは良好。しかも流石はニッカン。なかなかいい音がする。
かうして、ニッカンユーフォニアムは見事に復活し、樂器屋よりも「トイザらス」に相応しい風貌へと生まれ變って、オブジェとして生き長らへる道を歩み始めたのであった!
完
2003.8.15 作成
Hidekazu Okayama