「リンカンシャーの花束」の合奏に參加しました。雑誌「PIPERS 252號(2002年8月号)」に「実際にやってみないと云々」などと書いてしまった手前(笑)、まづはイギリス式のバリトンで「Baritone」のパートを吹きました。
ご存じない方へ、ちょっと一言。P.グレインジャーさん作曲の「リンカンシャーの花束」は、Baritone と Euphonium のパートが完全に別れてゐまして、それぞれに随分と違った役割があてられてゐます。グレインジャーさんは、イギリスのリンカンシャー地方の民謡を集めて、この素晴らしい組曲を作ったのです。イギリスの民謡といふことからか、近年、これらのパートは、イギリス式バリトンとユーフォニアム、若しくはユーフォニアム2本で演奏されてきました。
實際に合奏してみて、やはりグレインジャーさんが指定した Baritone パートは、イギリス式バリトンを意圖したのではないであらうと思ひました。以下、具體的に思った點です。
・第1樂章のホルンとのユニゾン、第2樂章冒頭からの、ホルンとユニゾンのメロディーは、管の細いイギリス式バリトンが加はっても、音樂に奥行きが出てこない。
・第4樂章のソロは、イギリス式バリトンだと、音色が明るすぎて、それまでの木管樂器のソロやメロディーと對比して、面白味がない。
・第5樂章のソロは、それまでの金管のユーモラスな動きから劇的な展開を見せるのに、イギリス式バリトンだと、その魅力が半減する。
そんなことを思ひつつ、途中からユーフォニアムで Baritone パートを吹いてみましたが、今度はちょっと重くて、どうも調子が出ません。豫想してゐたとは言へ、イギリス式バリトンの音色も、ユーフォニアムの音色も、グレインジャーさんの意圖したであらう Baritone の音色とは思へなくなってしまひました。丁度、イギリス式バリトンとユーフォニアムの間を取ったような音色を持つ樂器が相應しいと思へてなりませんでした。そこで、ドイツのテノールホルンやバリトンを試してみましたが、どうもしっくりきませんでした。となると、やはりここはアメリカ式バリトンホーン(ユーフォニアム)の出番になるのではないか???
かつてのゴールドマン・バンドやイーストマンWE、ソロ奏者のL.ファルコーニやR.ヤング氏がレコーディングにも使用したアメリカ式の樂器(コーンやキングなどは、モデルによっては、ボアサイズが同じにも關らず、3ピストンならバリトン、4ピストンならユーフォニアムとしてゐました。グレインジャーさんは、さうしたアメリカの樂器の事情や習慣も、知ってゐたのではないかと思はれるのです)、どうもこれがクローズアップされてくるのです。
上の縮小畫像を見ると、イギリス式バリトンとアメリカ式バリトンホーン(ユーフォニアム)の管の太さの違ひが、ちょっと分かりにくい(拡大畫像だと判り易い)のですが、實際のアメリカ式バリトーンは、ホントにイギリス式バリトンとユーフォニアムの間くらゐの太さなのです。つまりイギリス式バリトンより太くて、ユーフォニアムより細い。音色は、イギリス式バリトンよりも太い音がして、ユーフォニアムよりも明るく、歯切れが良いです。ま、實際に使ってみないと分かりませんが、やっぱコレかな?って氣がしてます(笑)。
早いトコ、「これだ」って樂器を見出して、たっぷり練習したいです。
平成14年9月1日
無斷引用ヲ禁ズ
Hidekazu Okayama