サテンシルバーの樂器の手入れ

 

 このページには青少年には有害かもしれない内容が含まれてゐます。また成人でも、取り扱ひを誤ると、痛い目に遭ひます。どうか、自分の責任で行動を取れる方のみ、ご覧になって下さい。このページを參考にして、不具合が發生した場合、ワタシは何ら責任は負ひません。しかし、良い結果が出た場合は、是非教へてくださいね〜!(笑)

 

 「サテンシルバーの樂器をシルバーポリッシュで磨くと、ザラザラがツルツルになってしまう」といふやうな聲が聽かれます。さて、本當でせうか。實は數年前、サテンのウィルソンに、研磨剤使用の金属磨きの大御所「ピカール」を使ったことがあります(もちろんおっかないので部分的に)。で、結果は!? そんな簡單にツルツルになどなりませんでした。ただ、ザラザラの凸面がピカピカに磨かれるため、磨いた部分だけが「やや」テカって見える氣がしました。ほんとにそんなもんです。むろん凹凸自體はちゃんと殘ってゐますので、時間が經つと、また凸部分が擦れて、曇った銀になります。

 とは言へ、頻繁に研磨剤を使用すると、凸部分自體がどんどん削れて行くことになりますので、終ひには、凸部分が無くなり、ツールツルになるようです。そこで、サテンの樂器手入れ台數10台を越えるワタクシが、安全なサテンの磨き方をご教示いたしますので、メモのご用意を。サテンの汚れッぷりを三段階に分けてご説明いたします。

 


 

1.サテンの樂器を買ったばっかり!

 いいですねぇ。今、サテンのユーフォニアムの新品は、ウィルソンしか扱ってゐません(ヒルスブルナーはオプションのみ、ベッソンは廢止)。これがまた眞白なんですよね。兎に角、練習後は、布でよく拭くことです。

 お勧めは、東レの「トレシー」です。トレシーのページのホームユースアイコンをクリックすると、樂器用の製品ページがありますので、參考にして下さい。管樂器を扱ふ全國の樂器店に、大體置いてあるやうです。ワタシは新大久保の「DAC」さんで購入してゐます。また、神戸のグランド楽器さんでも、同樣でオリジナルの布を販賣してゐました。

 これらの布は、通常の布よりも繊維が細い爲、サテンの凹凸の凹の部分にまで糸が入り込み、塩分を含んだツバや汗、手の油、ホコリなどの汚れを取り去ります。さう、サテンの汚れが目立つ原因の多くは、これら、日常的な汚れの付着、そして凹凸のおかげでそれらを取り除きにくいところにあるのですね。

【注】 他社の類似製品のなかには、かうした超極細繊維に、洗剤や研磨剤を含ませて加工した物があります。研磨剤が含まれてゐた場合、極端な話をすると、「ピカール」を使った場合と同じ結末が豫想されますので、ご注意を!

 


 

2.しばらく使ってきたら、なんか黒ずみが出てきたなぁ

 まづ、黒ずみの原因は、「汚れ」と「硫化」(「酸化」だと思ってゐましたが、正しくは「硫化」)です。

 「汚れ」の場合は、ハイテクスポンジ「べっぴんさん」がお勸めです。これは、超極細繊維よりもさらに細かいスポンジです。コレに水を含ませて、汚れ部分をこするだけで、あら不思議! 「汚れ」による黒ずみが、きれいに落ちます。ワタシは「東急ハンズ」で購入しましたが、べっぴんさんのサイトでも通販してゐます。

【注】 このスポンジはかなりもろいので、ザラザラのサテンの上でこすると、汚れとともに、垢スリの垢のやうにポロポロ削れて行きます。ヴァルヴケーシングなどにカスが殘らないやう、掃除後はよく水洗ひして下さい。

 また他社の類似製品のなかには、かうした超極細繊維スポンジに、洗剤や研磨剤を含ませて加工した物があります。研磨剤が含まれてゐた場合、極端な話をすると、「ピカール」を使った場合と同じ結末が豫想されますので、ご注意を!

 さて、續いて「硫化」の場合、いくらこすっても、落ちません。これは銀メッキの表面が化學變化を起こしてゐるのです。といっても、これはサテンシルバーに限ったことではなく、通常のブライトシルバーの樂器にも同じコトが起こってゐるのです。ま、サテンの方が、つや消しなので黒ずみが目立ちやすいのですね。どうしても、氣になる場合は、前橋の中島樂器さんの「BUZZ シルバークリナー」ジャパンテューバセンターさんの「シルバ−クリ−ム」など、研磨剤を使用してゐないクリーナーで、磨きませう。これ、かなり重宝します。

 


 

3.もう、眞っ黒よ

 全體的に、または部分的に眞っ黒、もう焦げたアルミ鍋みたいになってゐる場合、これには最後の手段があります。ですが、ちょっとその前に、2のスポンジをまずは試して下さい。これでもまだ黒ズミが取れない場合に、この方法を取って下さい。なぜかといふと、ここまでイッてゐる場合、「汚れ」と「硫化」の兩者が結びついてゐる場合が殆どなのです。そこで、まづ「汚れ」の部分を取り去ってから、「硫化」の部分を落とすといふ段取りが効果的なのです。そしてまた、「BUZZ シルバークリナー」「シルバ−クリ−ム」を試してみるのもいいでせう。

 さていよいよ、秘密兵器の「還元剤」を紹介します。硫化して黒くなった銀メッキを、化學變化させて元通りの銀色に戻すものです。特に廣い範囲の黒ズミやかなり濃くなった黒ズミを手早く落としたい場合に、非常に有効です。

◆◇ 用意する物

・還元剤 − ワタシが使用してゐるのは、オランダ、W.J.ハガティアンドサンズ社製造の「ハガティ シルバー ディップ」です(銀食器磨きのページにあります)。いろいろなタイプがあり、中には研磨剤や洗剤を含んだ物もあります。ですので、この「シルバー ディップ」を選んで下さい。これなら間違ひないでせう。500mlですので、ジャンジャン使へます。ワタシは「東急ハンズ」で購入しました。

・スプレー容器 − 100圓ショップの化粧ポット賣場に置いてあるやうなもので大丈夫です。ただし、他の用途には使はないようにして下さい。

・マスク − なければ、口にタオルを巻いて下さい。溶液をかけると、猛烈な異臭がしますので。

・エプロン − なければ、まぁ濡れても汚れてもかまわない格好で。

・ゴム手袋 − 肌が荒れやすい方は必須。ワタシは別に無くても大丈夫でしたが。

・タオル、またはスポンジ

 まづ、「ハガティ シルバー ディップ」を、スプレー容器の八分目くらゐまで移します。換氣の良い場所(そして床が汚れてもいい場所)にて、樂器本體の水分をよく拭き取った後、本體に「ハガティ シルバー ディップ」をスプレーします。すぐに黒ズミが流れ落ちてきますので、よく絞ったタオルやスポンジで拭き取ります。こまめにスプレーと拭き取りを繰り返し、全體にムラが殘らないやうにするのがコツです。これで、嘘のやうに綺麗になり、しびれます、ホントに。下の畫像を是非拡大してご覧になって下さい。

使用前 すごい!
使用後 すごい!

 尚、スプレー中、溶液がツーっと流れて行くと、その軌跡がそのまま殘ってしまひます。まぁ、その時はまたスプレーし直せばいい譯ですが(笑)。タイミングによっては、その後何度スプレーしても、スジが消えなくなってしまひます(つまり、「本日の化學變化終了!」状態)。かういふ時は、前述の「研磨剤を含まないクリーナー」で、その部分を拭いて下さい。綺麗にスジが取れます。

【注】 他社の酸化還元剤や、ハガティの他の還元剤については、事情が分かりません。特に、「メッキ製品には使用しないやうに」といふ注意書きがある物は、避けませう。サテンシルバーも銀メッキ製品ですので。また、地金への影響は、ワタシが使用した限りでは、大きな影響はないやうに思ひます。ま、さういふことが心配な方には、ご使用はお勸めしません。磨かない方がいいと思ひます。

 


1. よくある誤解を一點のみ。よくサテンシルバーの樂器を「いぶし銀」といふ風に言ふことがあります(ワタシも以前はさう言ってゐました)が、これは、專門用語としては間違ひです。「いぶし銀」は、銀の表面に熱を加へて、黒ずませた(文字通り「燻した」)ものを言ひます。サテンシルバーは、「マット」または「梨地」と言ひます。

2. ウィルソンのサテンシルバーを使用してゐた時、日が經つにつれ、ポツポツと白っぽい小さな斑點が目立ってきました。ベッソンやB&Hを使用してゐても、そのやうな斑點は出てこないので、ウィルソンのメッキ特有なのかも知れないです。ちなみに、ピカールでも落ちませんでした。酸化還元剤なら取れるのだらうか・・・。

3. 上の畫像は、ワタシが取り次いだウィルソンのサテンですが、使用前を見ると、やはり斑點が目立ってゐます。どうやら、白っぽい斑點が「發生」したのではなく、この部分だけ變色してゐない(周りが變色してゐる)といふ風に考へた方が良ささうな感じですね。

4. 銀の「硫化」については、以下のページが參考になる。ただし、ユーフォニアムやマウスピースは、「銀」そのものではなく、「真鍮に銀メッキ」なので、手入れの仕方については、これらのページを鵜呑みにはされないやうに。あくまで、「銀の性質」を知るページといふことでご紹介する。

手作り銀工芸「RMR」−「銀のお手入れ」
http://www.f7.dion.ne.jp/~rmr/care.silver.htm

アクセサリーブランドの「error」−「シルバー・ゴールドの豆知識」
http://www.error-effect.jp/silver.htm



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Hidekazu Okayama