カイゼルバリトンについて その2

 

 前項では、「カイゼルバリトン」の概念が、樂器のシステム上の區分から、機能上の區分、またはランクとしての區分へと變化していることを現してゐるのかも知れないとして、段階的ボアを採用してゐないカイゼルモデルを紹介したが、その後、何台かの樂器に遭遇し、ますますその現状が明らかになって來たので、改めて紹介したいと思ふ。結論から言ふと、前項の最初に採り上げた「カイゼルモデルの特徴とは、第1ヴァルヴから第4ヴァルヴに行くに從ってボアが大きくなって行くといふシステム」は、カイゼルバリトンの特徴とは成り得てゐないのが現状である。

 その例として前項では、ミラフォン社の最高級カイゼルバリトン Premium モデルを採り上げて説明した。その後調査出來た他社の「カイゼル」を名打ったモデルの實寸は、次の表の如くであった。參照頂きたい(単位は mm)

Bell 1st valve 2nd valve 3rd valve 4th valve Main

Miraphone (Ger.)
Kaiserbariton 56L
PREMIUM
315 15.40 15.40 15.40 15.40 16.00/18.60

Rudolf Meinl (Ger.)
Kaiserbariton
315 15.00 15.00 15.00 15.00 15.00/18.90

Cerveny (Cze.)
Kaiserbariton
CEP741-5R
300 16.10 16.10 16.10 16.10 16.10/18.15

 

 なんと、カイゼルバリトン生みの親であるチェルヴェニーからして、カイゼルバリトンの最高級モデル CEP741-5R で、段階的ボアを採用してゐない! しかも、3社ともボアサイズがバラバラ(笑)。共通項と言へば、

・カイゼルバリトンはバリトンの最高ランクに位置してゐる。
・ベルやボアが通常モデルより太く、大きい。

 この程度でしかなくなってしまった。製造に手間とコストのかかる舊カイゼルシステムを、わざわざ採用しなくても、カイゼルの名に恥ぢない、太く豊かな響きを出せるモデルが製造出來るやうになった、といふことだらうか。一寸さびしい氣もするのだが。


前項のはみだしに書いた、カワイから販賣されてゐるストレートベルの「テナーテューバ」について、ご覧になった方から情報を頂いた。MUSICA は、オリジナルモデルも出してゐたやうだが、やはりチェルヴェニーが工場であった。「テナーテューバ」といふのは、カワイが勝手に付けた名稱であり、正しくは Bariton であるとのこと。ボアは1〜4ヴァルヴに至るまで、すべて 15.00mm であるとのこと。ちなみに、MUSICA は、昨年(2001年)に、倒産してしまったとのこと。



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Hidekazu Okayama