13/9/4 「古い音源を聽きつつ」


 バンドで、F.マクベスの「マスク」をやるといふので、最近發賣された、昔のコンクールの復刻音源を聽きました。福岡縣立嘉穂高校の全國大會の実況録音。中學生の頃、これをLPで聽いてたまげたものでした。これが日本一の高校生なんだ、と。そして、マスクの格好いいこと。今、やうやくCD化されたものを聽き直してみましたが、やっぱりスゴイ。

 ついでに、そのCDに入ってゐた、瑞穂青少年吹奏樂團の「シンフォニア・ノビリッシマ」(R.ジェイガー)、阪急百貨店吹奏樂團の「ドラマティコ」(F.マクベス)、電電中國吹奏樂團の「交響的舞曲第3番 フェスタ」(C.ウィリアムス これも候補に擧がってる)と、次々に聽いてしまひました。

 確かに、近年の全國大會の方が、プロオーケストラ顏負けの、ずっと大人っぽい演奏で、「こ、これが吹奏樂か!」と言ふくらゐ、素晴らしい演奏をしてゐます。でも、それはすごいなあ、とワタシも思ふのですが、何かもの足りない。

 このCDを聽いてゐますと、音程は惡いし、ソロが一瞬ビビッちやったり、緊張して音を外したり、リードミスは激しいし、勢い良すぎて臨時記号を忘れたり、多分減點方式で審査されれば、地區大會止まりになりさうなものです。それなのに、演奏が實に力強いんですよ。音の伸びも凄まじい。お腹に力入りっぱなし。そして音のキレが、本当に氣持ちいい! 今の學生や指導の先生達は、どういう風にこの演奏を聽くでせうか。もっと音程合はせて! とか、そんなに力んで吹くな! とか言ふ人も多いのだらうなぁ。でも、ワタシはかういふ、演奏する方も、聽く方も、額に汗して、手に汗握る演奏が、やっぱり好きなんですね。今日、改めて、そのことを思ひ出させてくれました。

 高校の頃、バンドピープルに全國大會金賞受賞團體の寫眞が載ってゐまして、その中の一枚の寫眞に、とても感動して、どうにも忘れられません。驛前の立ち呑み酒場で、頭にタオル巻いて、目を眞っ赤にして、酔っぱらって大聲で騒いでゐさうな親父達が、トロフィーと賞状を持って、子供のやうにはしゃいでゐる寫眞。それが、名門、ブリジストンタイヤ久留米工場吹奏樂團の方たちでした。親父になっても、こんなに熱く吹奏樂がやれるんだなぁ、と勇氣づけられたものです。そして、自分もさういふ年に近づきつつあります。