歴史的樂器展示館
中古樂器買付けの合間に、世界各地から入手しました。

* 畫像をクリックすると、拡大表示されます。


 

EUPHONIUM - British Type

 BOOSEY & Co. Imperial Model "SOLBRON" Class A (1930年製)

 Boosey と Hawkes が合併する直前のモデル。各管の回し方など、今の形とほぼ變らない事が判る。各テューニング管が不自然に長かったり、ベルの彫刻が不自然であったり、色々と謎が多い。ユーフォニアムの歴史を辿る上でも、今後、調べて行きたいと思ってゐる。謎を解くべく、特別講義 開講中。

 流石に實戰には向かないが、音色は、やはり B&H や Besson を彷彿とさせる。

 HAWKES & Son Exelsior Sonorous (1930年以前)

 Boosey と Hawkes が合併する以前のモデルで、こちらは、HAWKES & Son のモデル。兩社の統合が1930年だから、それ以前のモデル。BOOSEY と同じく、4ヴァルヴコンペンセイティング。BOOSEY とはライバル會社の HAWKES & Son も、ブレイクリーのコンペンセイティングを採用してゐたといふことが、これで判る。メインテューニングスライドが前方にあり、第4ヴァルヴの抜差管が背面にあるといふ點(他、第2ヴァルヴの枝管の向き、第4ヴァルヴの位置等)が、BOOSEY & Co. のモデルと異なる。

 NIKKAN 型番不明

 中學生の時、初めて吹いたユーフォニアムがこれと同じモデルだった。よく「バリトン」と言はれるが、バリトンではなく、ユーフォニアムである。入手してピカピカに磨く豫定だったが、かなりの手間と費用がかかることが判明し、オブジェとして別の道を歩んで貰ふことにした。オブジェにしてはいい音がするのは、名器ニッカンの意地か!?

 復活の過程は、こちらをご覧あれ(笑)。

 

TENORTUBA in C

 メーカー不明(Markneukirchen)

 1875年頃のマルクノイキルヒェンの工房、A.G.Glier のモデルにそっくりだが、エンブレムがない。このモデルはMoritzのテノールテューバ(1850年)を元にしたやうだ。Moritzのモデルよりもベルの廣がりが大きくなってゐることから、やはりGlierと同じ時代のモデルで、恐らくはマルクノイキルヒェンの他の工房で造られたものと推測する。ベルリン式3ヴァルヴ。

EUPHONION, BASSFLUEGELHORN or TENORHORN in B♭

 LEOPOLD UHLMANN

 ウィンナヴァルヴ、ウィンナホルンの發明で有名な、ウールマン製の樂器。製造年代が特定出來ないので、樂器名も判斷出來ない。

 ウィーンで發達していったといふ Sommerphone(後に Euphonion と呼ばれることになった最初の樂器)に、形がよく似てゐる。ウィーンでは、テノールホルンといふ言ひ方よりも、バスフリューゲルホルンといふ言ひ方が多い。それは、かうした樂器が使はれてきたといふ傳統に基づくのかも知れない。

 エンブレムの畫像はこちら。ウィンナホルンに詳しい方なら、年代が特定出來るかも知れない。

 Ackermann & Lesser

 ドレスデンの樂器工房 Ackermann & Lesser (1880-1945) のテノールホルン(バスフリューゲルホルン)。詳しいことはまだ判らないが、19世紀末頃から20世紀前半の樂器のやうだ。F.ゾンマーのゾンメロフォン(ユーフォニアムの元祖と言はれる)の形によく似てゐる。

 Gebr. Alexander

 マインツの樂器工房アレキサンダー製テノールホルン。現代のテノールホルンよりも小振り。A.ベインズの「金管楽器とその歴史(The Brass Instruments)」に、この樂器のイラストが掲載されてゐる。

 

SAXHORN BARYTON - French Type

 GAUTROT MARQUET 型番不明 (1863〜1888年製)
 
マウスピース:物色中 (Midium Shamk)

 フルートの他、オムニトニックホルンやオフィクレイド、サリュソフォーンなども製作してゐた、フランスのゴートロのサクソルンバリトン。製作年代は、1863〜1888年。

 外觀は、サクソルンといふよりも、ヴァイマールのゾンマーが演奏してゐたゾンメロフォンに似てゐて、驚かされた。マウスパイプは、サクソルンによく見られるテューニングスライドがなく、今のユーフォニアムのやうに、ピストンシリンダーに直ぐに入るタイプである。調子はC管。裏側からの畫像

 ヲグラ管樂器

 戰前にバリトン(テノールホルン)と呼ばれた樂器ではないかと思ふ。星に碇のマークから推察するに、陸・海(星・碇)兩軍で使はれたもの。

 面白いのは、全國樂器業組合聯合會の「規格檢査合格之證」が貼り付けてあり、「樂器配給協議會認定」、價格が\04.76とあるところ。よく見ると、「物品税80%税込み價格」となってゐて、驚かされる。製造番號は5829。日管みたいに簡單に年代を特定できさうにないのが殘念。

 吹いてみたところ、半田外れや、スカスカピストンによる異音が混るものの、とてもよい音色。管の組み方も丁寧で、思はず「いい仕事してますねぇ」と言ひたくなる。

 

SAXHORN BASSE - French Type

 日本管樂器株式會社

 戦時中に海軍に納められたと思はれるサクソルンバス。「櫻に碇」の刻印がある。刻印の畫像海軍では「ユーホーニオン」「ユーフォニアム」と呼び、陸軍では「プチバス(小バス)」と呼んでゐたとのこと。樂器は、どちらもサクソルンバスである。

 戰利品として、アメリカに持ち去られたものなのか、アメリカのオークションに出品されてゐた。平成16年夏、歸國を果たした。修理すれば使へさうだ。

 「海ゆかば」を吹いてみたが、豊かで朗々とした音色に驚いた。當時の工業技術は相當なものであったことと想像する。裏側からの畫像

 日本管樂器株式會社

 戦時中に陸軍に納められたと思はれるサクソルンバス(刻印の畫像)。陸軍では「プチバス(小バス)」と呼び、海軍では「ユーホーニオン」「ユーフォニアム」と呼んでゐたとのこと。樂器は、どちらもサクソルンバスである。

 BESSON & Co.

 Boosey & Hawkes に合併する以前の、フランス式管樂器を作ってゐた當時のベッソン製。第3ヴァルヴを押すことにより、G管になるのだが、補正管を通るセミダブルではなく、別の管に迂回するフルダブルである。

 ユーフォニアムのやうにも見えるが、フランスのベッソンであることと、外觀の丸っこさからすると、ユーフォニアムではなく、サクソルン・バッセとした方がよいのかも知れない(流石にここまで外觀が似てゐると、分類が難しい)。

 

普通の樂器はこちら

 

 


Hidekazu Okayama